東京新宿にて日本小児科医会主催による「子どもの心」研修会が開催され、私も参加してまいりました。近年は子どもの心の病気、発達障害、虐待・ネグレクトといった社会的問題に、いかに積極的に小児科医が関わることができるかが重要で、一小児科医として今後どのような取り組みが自分には必要かを知るには非常に中身の濃い講習会でした。特に印象に残ったのは弁護士の方々が作った子どもシェルターの講演でした。覚醒剤などの問題行動・非行により補導・逮捕された青少年たちを弁護士の方々が付き添い人として関わりますが、そういった子どもたちも最初からそんなことをやりたくてやっている訳ではなく、家族からの虐待に耐えかね、家を出て生きてゆくために、同じような境遇の人 間同士で集まり、いやなことを忘れられるからと悪い大人たちに覚醒剤を勧められ、売春などにも手を染めてしまう。親からの愛されることなく暴力からひたすら逃げ回り、児童相談所が介入しても一時預かりのみで結局自宅に帰されて、また暴力を振るわれる。18歳を過ぎると児童相談所の対象年齢でなくなり、行くところ、関わるところがなくなり路頭に迷う。こんな青少年、若者の駆け込み寺といて東京弁護士会子どもの人権救済センターの先生方がNPO法人「カリヨン子どもセンター」を設立、シェルターを作られたそうです。小児科医として、常に子どもの味方としてあらねばと思いつつも、いつも自分の無力さに辟易としていますが、そういった行き場のない青少年、若者の受け皿が、本来は国レベルで整備してほしいと常々感じているばかりでしたが、それをまず弁護士の方々が一石を投じ、かつ明確な形を作り上げたのは驚きでした。
また虐待の脳への影響を画像で明確に証明された福井大学の友田先生の講演では、虐待を受けたり、夫婦げんか、DVを目の当たりにしたり怒鳴り声・罵声を聞いたりするだけで、脳の特定の部分が変形したり縮小したりするそうです。その結果をふまえ厚労省が「愛の鞭ゼロ作戦」と称し、体罰をなくすようキャンペーンも始まりました。
子どもにとって何がよくて、何がいけないか、ということは当たり前・常識という観点ではわかりそうなものですが、この「当たり前・常識」が全ての大人にとって共通しているとは限りません。それぞれの家庭でのしつけ方、育て方があり、家庭という「密室」の中まで他人が立ち入って意見・注意ができないものです。このように虐待・DV体罰などによる脳への影響が科学的に証明できたことで、国レベルでのキャンペーンに移行できたことは非常に意義が大きく遍く全ての家庭で子どもたちにとって良い環境が整うことが期待されます。
最後に、私も一小児科医として日々勉強し、子どもの心に沿って医療に取り組むよう邁進したいと思います。