便秘症とは
一般的に便秘は「何日も便が出ない状態」と理解されていることが多いようですが、2017年10月に、日本消化器病学会関連研究会が作成した「慢性便秘症診療ガイドライン2017」では「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。毎日食事を摂り、食べた分だけ便ができる訳ですが、それを毎日きちんとしっかりすっきり出し切ることができていない場合に「便秘」と考えます。
治療の必要性
果たして「便秘」は治すべき「疾患」なのか、という点で疑問に持たれるかもしれませんが、やはりきちんと「治すべき」です。なぜなら「便」は「老廃物」だからです。同じ老廃物として「尿」がありますが、尿が1日出なければ脱水症か腎不全ということになり、とんでもないことです。しかしなぜか「便が出ない」ということは病気として認識されていないのが現状です。老廃物をため込むことは体にいいわけはなく、特に便は腸内で停滞することで腸内環境が悪化します。具体的には「善玉腸内細菌」と「悪玉腸内細菌」のバランスが悪くなります。腸は免疫やアレルギーに深く関わっている臓器で、その環境が悪化すれば体に良いわけはありません。また腸は「第二の脳」とも呼ばれ、精神への影響やストレス、子どもさんの発育・発達にも影響します。
治療のタイミング
3・4歳ころからトイレで用が足せるようになってからも、便の形・性状を親御さんが必ず確認しましょう。徐々に排便がない日が目立ち始めれば早めに受診しましょう。自分でトイレに行けるからと、完全にお子さんに排便をまかせず、親御さんの目でうんちを確認してください。また小学校に入学するまでに、朝食をしっかり食べて、そのあとにトイレに行く(出なくてもいいので、トイレに座り踏ん張る)、という習慣をつけましょう。
治療の実際
いわゆる便秘薬としては、今最もお勧めしているものは「モビコール」というお薬です。飲みにくいのがネックですが、徐々に飲めるよう慣れてゆけば十分な効果が発揮され、また弊害も少ない非常に良いお薬です。また浣腸もお勧めです。昔から「癖になるから浣腸はしないほうがいい」と言われていますが、そんな科学的根拠はありません。特に便秘薬をあまり使いたくない乳児期のお子さんにはお勧めです。
生活の質の改善のために
皆さんは「漏らしそうになった」経験はありますか?また学校で漏らしちゃった人を見かけませんでしたか?漏らした人はトラウマを抱えてしまい、ひどくいじめられた方もいらっしゃると思います。またトイレに行けない状況でこそ、なぜか便意を催すことも珍しくありません。毎日朝でかける前にすっきり出しておくことができる人とできていない人では生活の質が違います。多くの便秘患者さんは長くつきあってゆくことになります。子どもさんのこれからの長い人生をより良く歩んでゆけるように快適な排便を目指しましょう。